ポイント①:目的を決めてソフトの種類を絞る
まず一番のポイントとしては、「目的(作りたいもの)を決めること」です。作りたいものが決まっていれば、それに合うようなソフトがどれか探せばいいだけです。
3DCGソフトには、主に色々なことを総合的に扱う「統合ソフト」と専門性の高い「特化ソフト」があります。「統合ソフト」でもソフトによって作るものに対する向き不向きがあり、価格帯もまちまちだったりします。
ほとんどの人は統合ソフトを使いますが、3Dプリントのためなどにモデリングだけしたいという方もいるので、初心者として始めるなら、
- モデリングソフト
- 統合ソフト
が選択肢として挙がると思います。(MMDなどでアニメーションだけやりたい方もいるかもですが、タブンその方はソフトに迷いがないと思うので、今回は伏せておきます。)
個人的には統合ソフトをオススメしますが、モデリングだけしたい方は、3DCG初心者のためのモデリング講座【モデリング方法編】にモデリング方法の種類を書いたので、この辺りを見ながら吟味してみてください。
ちなみに、ここでは紹介しませんが、数値的に正確性を求められるモデリング(工業製品を3Dプリントするとか)の場合は3D CADソフトの方がいい場合があるのでご注意ください。
ポイント②:予算
フリーのソフトもありますが、3DCGソフトは大体シェアウェアです。正直に言うと、専門性の高いソフトなので安くないです。
どこまで3DCGをやり込みたいかによって、掛けられる予算も変わってくると思うので、重要なポイントです。
大きく分けてソフトの価格帯は3つに分かれています。
- ハイエンド:40万~
- ミドルエンド、特化ソフト:5~20万
- エントリー:~2万
具体的なソフトに関しては3DCGソフト | 俺CG屋を参考にしてみてください。
大雑把に言うと、Autodeskという会社のプロ用御用達Maya、3dsMaxなどがハイエンド、Lightwave、modo、cinema 4Dなどがミドルエンド、Metaseqoia、Shadeなどがエントリーです。特化ソフトでは、「スカルプトモデリングに特化したZBrush」「景観作成に特化したVue」などがあります。
統合ソフトを買うなら、ミドルエンド以上をオススメします(特にアニメーションをやりたい方)。ただ、お金をかけたくないようならフリーソフトのBlenderもかなり高機能でオススメです。
注意点①:「ハイエンド=なんでもできる」ではありません。
それぞれのソフトがそれぞれの設計思想を持って作られているので、「あの価格帯でできるあの機能とかあんなことが、このソフトではできない!」なんてことは日常茶飯事です。似たような機能は付いていることは多いのですが、ソフトによって癖や使い勝手が大分違います。
また、プロの作る映像などは基本的な統合ソフトに加え、様々なプラグイン・専門ツールが駆使されていることが多いです。特に大きめの企業で作っているようなものは様々なソフトを併用して作っています。
注意点②:3DCGソフトだけでは完結しない。
3DCGソフトというのは3DCGを作るソフトであって、画像編集や映像編集などの機能は付いていません。なので、Photoshopなどの画像編集・ペイントソフトや、AfterEffectsなどの映像を扱うソフトが必要になってきます。(勿論フリーのものを使えば、ここの予算はカットできます。)
スカルプトソフトを使ったり、テクスチャを描き込んだりするならペンタブレットも必要になってきます。
総合的な予算組みをオススメします。
ポイント③:習熟コスト
資料の多さ
資料(ネット記事、ネット動画、本など)の多さは非常に重要な要素です。特に初心者で独学な方はここに重点を置いてください。
最近になってSNSやブログなどが増えて、日本語の資料も増えてきましたが、基本的に3DCGの良質な資料は海外に多いです。
良質な資料を用意しているソフトもありますが、大体は読むのが億劫になるようなものが多いです。ただ、専門的になればなるほど、公式のチュートリアルやリファレンスは見ることになるのですが。
日本語の資料が多いソフトとして代表的なものがmetasequoiaやMMDです。ニコニコ動画などの影響によって使っている人が沢山いるので、解説や使い方を説明してくれている人が沢山います。こんなことからも入門者向けだと言えます。
一度3DCGがどうやって作られるのか体験してみたい方は、この辺りを触ってみるといいかもしれません。
調べ方については3DCG制作での資料の探し方で紹介しているので、参考にしてみてください。
ソフトの複雑性、専門性
ハイエンドソフトというのはできることが多い分、それを覚えるのに時間がかかります。同じようなことをするのでも、できることが多い分、回りくどいことをすることもあります。
また、そのソフトの構造を理解しておく必要性が往々にしてあるので、正直に言うと初心者で独学な方にはオススメできません。プロが使っていてもたまに「どうしてこうなる!?」ということがあるくらいなので、逆に挫折しやすいです。
反面、エントリーやミドルエンドのソフトというのは、できることは必要最小限ですが、無駄な機能が入っていないので、扱いがシンプルで済みます。ラーニングコストもそれほどかからないので、技術的なコストを抑えて作品制作に集中することができます。
わかりやすいのがMMDやCLIP STUDIO ACTIONなどです。あれはゲームなどに使われるローポリのものしか使えないですし、正直言うと出来上がる画も大したことないです。ですが、キャラクターアニメーションに特化しているので、様々なキャラクターに対するモーションのコピー、布などの物理演算、kinectによるモーションキャプチャ、IKの設定、モデル・ポーズ・モーション管理など、同じことMayaやMaxでやろうと思ったらまぁ厄介で面倒なことを、一瞬でそれっぽく作ることができます。
作りたいもの・表現したいものとして、それで必要十分なのならば、そっちの方がいいものが作れます。
どちらがいいとも言いかねますが、自分の作ろうとしているものに見合うものを選ぶことをオススメします。
ポイント④:体験版のススメ
3DCGソフトには必ず体験版があります。
実際触ってみないとわからない部分が沢山あるので、ある程度目星を付けたら、体験版をダウンロードして触ってみて下さい。
メニューを軽くみたり、少しカチカチいじってみるだけでも、ソフトに対する理解度が触る前と触った後で大分違います。
安くないですし、動作確認にもなるので、一度体験版を試しておくことは重要になります。
まとめ
色々書きましたが、予算等が許すのならば、私が思うソフト選びの一番の指針は「目標としている人or会社が使っているソフト」だと思っています。(大体ちょっと調べるとでてきます)
ソフトも道具なので、職人さんが道具にこだわるように、それぞれのソフトによって作られるものも特色があると思っています。目標としている人or会社が使っているツールは、専門性の高い人たちが様々なツールを検証した結果、「自分たちの作りたいものを作るためにはこのツールが必要」「これを作るにはこのツールが一番近い」とそのツールに行きついていることが多いです。
ただそう言いつつも、ソフトに依存するのは、できるだけやめてほしいという思いがあります。3DCGといった技術的に高度なものを使っていると、「あのソフトのあの機能がないから作れない」とか言いたくなるのですが、作りたいと思ったものをどうやったら実現できるかを考えて、なんとかそれに近づくように試行錯誤してみてください。そういうところから新たな発想が生まれたりします。これは3Dソフトに限らずです。
CGという特性上、ソフト選びに関してはいつまで経っても悩まされる点ですが、少しでも自分にあった道具を見つけられる参考になればと思います。
【番外編その1】3DCG制作に必要なPCスペックについて
基本的には3Dゲームが動かせる程度のスペックを持つ、最近のPCであれば特に問題はありません。(自作PCなどは話が別ですが)
注意する点があるとすれば、以下の2つがあります。
- グラフィックボードが入っているか
- 32bitか64bitか
グラフィックボード
グラフィックボードは入っていなくても、オンボードグラフィックで動くことは多いですが、たまに動かない場合があります。
パフォーマンスとしてもそんなによくないはずなので、グラボは入れておいた方がいいです。
グラボは主にリアルタイム処理(3D画面の操作とか)に影響してきます。操作画面の快適さを必要とするのであれば、それなりにいいものを積んでおくことをオススメします。
ソフトによって相性のいいグラフィックボード、相性の悪いグラフィックボードがあったりするので、気になる方は調べてもいいかもしれません。
32bitか64bitか
最近の3DCGソフトは、ほぼ64bitで統一され始めてきています。(特にプロ向けのソフト)
32bitを切り捨てたソフトもあるくらいなので、32bitPCを使っている方はシステム要件に注意してください。
【番外編その2】プロになりたいという方へ
あんまりこんなことを書くような身分でもないのですが、一応。
新人として入るなら、必要とされているモノが作れていれば、ソフト関してはどれか触って3DCGの概念がわかっていればOKです。(勿論会社によりますが)
業界的には基本的にmayaかmaxかと言われていますが、3DCGソフトが多様化している今、「このソフト使ってないなら採用しない」なんて会社はそんなにないと思います。(知っているに越したことはないですが)
特にモデリングに関しては、ソフトの互換がしやすいので、どのソフトを使っていても大丈夫な印象があります。
また、会社によって作り方がまちまちだったりしますし、インハウスツール(社内で作ったツール)を使っているところもあるので、会社に入って覚えることも多いと思います。
それよりもアイデアや美術的センス、テイストがその会社に合っているかの方が重要視されます(テクニカル系は別枠ですが)。 採用の人やお客さんも要は結果となる「絵」や「もの」や「動き」や「データのきれいさ」「作れる早さ」などを見ているので、3DCGソフトがいかに使いこなせているかなんて見ていません。
ツールは使っていればそのうち慣れるので、「あっちのツールの方がよさそうだなぁ」とか言わずに、今持っているもので作るもののレベルを上げるようにしてみてください。