なぜポリゴンの流れをきちんと作る必要性があるのか?
ポリゴンの流れは、形状の流れに沿って作っていきます(一部例外を除いて)。
例えば、人間や動物なら筋肉の流れに沿って、車なら形状に合わせて、ポリゴンの流れを作ります。
形状の流れに合っていないポリゴンの流れを作ってしまうと、サブディビジョンサーフェイスやアニメーションで変形させたときなどに、形状として無理が出たり、エッジが弱くなってしまったり、破綻してしまいます。
なので、ポリゴンの流れをきちんと作ることは、ポリゴンモデリングにおいて、すごく重要なことになります。
EdgeLoopとFaceLoop
言ってしまうと当たり前のことですが、まずは基本から。
トポロジーの流れには、要素としてEdgeLoop(エッジの流れ)とFaceLoop(ポリゴンの面の流れ)があります。
- EdgeLoop
-
エッジの流れです。トポロジーを形成する上で重要な要素で、これで流れが決まります。
- FaceLoop
-
ポリゴンの面の流れです。EdgeLoopを繋ぐと、FaceLoopができます。これで形状の流れが決まります。
要点を押さえると、
目的としては、形状の流れ、つまり、FaceLoopを作りたいわけです。
そのためには、その前段階、つまり、EdgeLoopを作る必要性があります。
これを押さえつつ、この続きの色々な例を見てみてください。
①すでにポリゴンの流れのあるところに別の流れを作る。
これが一番使用頻度が高く、重要なファクターを占めるテクニックです。一見してポリゴンの構成を壊すやり方にも見えるので最初は抵抗があるかもしれませんが、大体このやり方でポリゴンの流れのあるところに別の流れを作ります。
使用するツールはポリゴンを切るするツール(以下、カットツールとします)です。(3DCG初心者のためのポリゴンモデリング講座①【最低限覚える操作編】でいうカットのツールです。)
まずは簡単な例から
こんな感じの流れに、
こういう流れを作りたいとします。
ここでカットツールの登場です。作りたい流れに沿って、そのまんまカットします。
そして、出来てしまった必要のないエッジを選択して、
消します。
これで目的の流れが出来ました。これがポリゴンの流れを作る基本「切って、消す」です。
これに一本EdgeLoopを足せば、目的のFaceLoopができます。
この場合、よくよく見ると、完成品は頂点を移動させても作れます。ですが、これはこのくらいシンプルな形状だからです。複雑な形状ではこうはいきません。
また、カットツールで一回切った方が流れが目に見えてわかるので、流れが把握しやすいというのもあります。
エッジを消さずに、逆に足すとどうなるか
同じ例で見てみます。
ここまでは同じだとして、さらにエッジを足す(カットする)と、このようになります。
四角形にするために、いらないエッジを選択し、
消すと、このようになります。
この状態だと、以下の図のように、ただ「エッジを消した場合のもの」の両端にエッジを足しただけのものになっています。
つまり、これなら「エッジを消した場合のもの」を作った後に、エッジを足した方が手数が少なく作れますし、わかりやすいです。
なので、基本は「切って、消す」という工程が上手くいきます。
複雑な部分ではここまで簡単にはいきませんが、カットツールを使って流れを作る時は切りたいようにポリゴンを切ります。ポリゴンの構成は切った後に整理します。
応用例
では、応用例として、このポリゴンベースに対して、
こんな感じで思い切り曲げてみようと思います。
イメージした流れに沿って、カットします。
四角形にするためにエッジを足します。
すると、こんな感じで四角形だけでポリゴンの流れができます。
では、別パターンとして、エッジを足さない場合を考えます。
エッジを足すのではなく、三角形になっているところのエッジをCollapse(折り畳み)、またはMergeすると、
こんな感じで、流れができます。
もちろん後者の方がポリゴン数が少なくなるので、一般的にはいいのですが、複雑な形状の中ではわけがわからなくなるので、前者のようにエッジを足す場合もあります。
このトポロジー構成はよくあります。
②1からポリゴンの流れを作る。
この手法はポリゴンの流れを始めから意識して作ります。
とても単純で、1つのポリゴンから
拡張していって流れを作ります。
この手法は、考え方としては最初からFaceLoopを作ろうというものです。とてもシンプルでわかりやすいです。
リトポロジーの時なんかは、この方法をよく使います。
他にもデザイン画があるときや、形がしっかりわかっているときなどは、流れに沿ってベースを作ったりします。
③ポリゴンをブリッジを使って繋ぐ。
よく使うテクニックの一つとして、「パーツに分けて作って、それを繋ぐ」ということをします。その時に使うのがブリッジ機能です。
こんな感じでパーツに分かれているものを
繋ぎます。
予めポリゴン数が同じくらいになる様に計画しておく必要がありますが、エッジを消したりしてポリゴンを整理する力が付いてくると、後合わせても結構いけるようになってきます。
キャラクターものだと、腕と手を繋ぐときや、筋肉ごとにパーツで作って繋ぐことなんかもあります。
②の手法「1からポリゴンの流れを作る」でポリゴンの流れをいくつか作って、それを繋いで流れを作っていくときなんかにも、ブリッジ機能は多用します。
④流れの分岐法
ポリゴンの間を割って、流れを分岐させたいときなどに使うテクニックです。
ペースのポリゴンに対して、
流れをこんな感じにしようとイメージします。
そうしたら、今まで通り、その通りにカットして、
三角形ポリゴンはできるだけ四角形にしておきたいので、エッジを消します。
ポリゴンの流れが分岐されました。
他にも消すエッジを変えると…
こんな四角形にすることもできます。
周りのポリゴンの流れや、形状によって使い分けたりします。
こういうトポロジーの構成は、片側だけエッジループを増やすことができるので、指など、先の方がディティールの細かいところなどでよく使います。
⑤インセットする
穴あけや凹凸を作る時なんかに使うテクニックです。ポリゴンのまとまりをインセットすることで、そこに円状の流れができます。
ベースのポリゴンに対して、
このような感じで穴あけしたいとイメージします。
その辺りのポリゴンを選択して、
インセットします。この時に使う機能は「押し出し」や「ベベル」でもできますし、「インセット」という機能が付いているソフトもあります。
インセット部分を選択して、
消せば穴あけができます。
そのままポリゴンを消しても穴あけできますが、あまりこちらの方が構造的にきれいです。(ものにもよりますが)
穴を開けた部分を少しいじれば、こんな感じで綺麗な凹みを作ることもできます。
車や機械など、穴が多いものには必須のテクニックです。
また、首なんかを作る時にも、このテクニックを使って、首回りが円環状になっているトポロジーを見ることもあります。
⑥エッジを回転させる。
①の応用例のような流れ(下の図のような流れ)を作る場合に、やり方としてもう一つあります。私はあまり使わないのですが、紹介します。
流れの転換点になるところのエッジを選択して、
エッジを回転させます。
そうすると、このようにポリゴンの流れができます。ただし、この手法の場合は逆側にもポリゴンの流れができるので注意して使ってください。
まとめ
いくつかの手法を紹介しましたが、実際の制作ではあまり意識せずにエッジを足したり、消したりを繰り返しています。何十個も作っていると、そのうち流れが見えてくるようになります。
あとは、上手い人のポリゴンの流れを観察して、「どうやったらこの流れになるのか」というのを研究していると、あるときを境にサクサク作れるようになります。